大悲庵のブログ

高野山真言宗大師教会

戒名と多様性

戒名をお付けする時、必ず故人様のお人柄をご遺族に伺います。
「穏やかで優しい人でした」が、とっても多いのです。世の中には穏やかで優しい人しかいないのでは、と思うほどです。自分の身近な人には穏やかな人は見当たらないので、羨ましいと思いつつ、故人様の生きてきた道を思い、一生懸命戒名を考えるのです。
今までで印象深かったのは「清濁併せ呑む人でした」というお人柄。人間らしくて自分は好きです。当方の肉親は激しい人でした。ましてや僧侶の世界は性根の善い人ばかりかと期待していたけれど、そうではない、と加行で知り絶望したものです。世の中が穏やかで優しい人ばかりなら、犯罪など起こらないのではないか、と思う。自分の知らない家庭、世界があるのだと、ただただ羨ましく思うのです。

仏教では当然「父母の恩」を重んじるけれども、世の中に「毒親」という言葉が生まれ、ほっとした人も多いと思う。最近になってようやく各宗派でも「多様性」を発信してくださるようになり、ジェンダーのみならず様々な多様性も認めてくださると更によいことと思います。生まれた時から恵まれて育った人ばかりではない。そうでない人の方こそ心のよりどころを求めているし、すがりたいと思っているのだと私は思う。