大悲庵のブログ

高野山真言宗大師教会

得度から先に進めない

「得度はしたけれど先に進めない」偶に相談されます。

高野山真言宗の場合、「得度」をすると本山に僧籍簿が作られます。本来、それだけではご葬儀などを執り行うことは出来ません。「授戒」「四度加行」と進み、「伝法灌頂」に入壇して阿闍梨となります。ここで伝授を受けることが出来る立場になり、いよいよ『僧侶』としてのスタートなのだと思います。葬儀を含む様々な作法や行法(諸尊法や理趣法等々)を面授(対面で伝授)にてお授けいただき、初めてそれらを自分で行うことが出来ます。

インターネットで得度させてくれる寺を見つけて「得度」したものの、お寺が先に進ませてくれない、と悩む女性がいらっしゃいました。話の内容から女性には本山度牒がおりていないことがわかりました。その寺独自の得度(本山未公認)であり、それでは本山での加行など先に進むことはできません。
また「「得度」から先に進みたいけれど、加行の為に高野山で何か月も過ごす時間がない。でも先に進みたい。どうにかならないか」と悩む方がいらっしゃいました。高野山以外でも加行はできますが、かかる日数は同じです。ご家庭の状況が許さない、ということであれば今はその時期ではないのかもしれません。
兄弟子には加行の為に長年勤めた会社を辞めた方もいらっしゃいます。早くに両親を亡くし家庭を持たない方もいます。自分もそうです。また何度か加行に入るチャンスがあったものの、寸前で行けなくなったり、体を壊したりして結局還俗なさった方もおられます。

いずれも自身の境遇に思い悩まれたのだと思いますが、身近に相談できる相手がいない状況が気の毒です。先を歩いている僧侶で親身に相談できる方が周りにいてくれれば、と思わざるをえません。そのような方がいないと僧侶になった後でも慣例や常識非常識、言葉の裏側を読むことなど、困ることが次々に起こるかもしれません。